著者:宮田明日鹿 , 編者:黒田杏子・黒田義隆(ELVIS PRESS)/ 発行:ELVIS PRESS / 150mm × 150mm ×27mm / 320P / ソフトカバー / 2024年11月発行
今、若い人はコスパとかタイパとか言うじゃないですか。自分の知りたいことだけ教わりたいから、ネットで早飛ばしで見たりね。手芸のワークショップもそうでしょう、1日とか2時間でできることなんて限られてるじゃん。せっかちですよね。でも結局それがね、心を蝕んでるんじゃないかって最近思ってて──(山本久美さんのインタビューより)
ファッション、手芸、アートの領域を横断しながらさまざまな作品を手がけているアーティストの宮田明日鹿。
本書は、彼女が企画運営する手芸プロジェクトのひとつである名古屋市港区の「港まち手芸部」の活動にフォーカスし、手芸部に参加する60代〜90代の7人の作り手の作品とインタビューを中心に編まれた作品集となっている。セーター、カーディガンにマフラー、レース編みの小物にビーズ編み鞄……紹介される作品は日常に見られる普段使いの実用性に富んだもの。
ひとつひとつを丹念に見ていくと、しみじみと素晴らしいんだけど、共通点があることに気づく。彼女たちの身近な行為である縫うことや編むことは、その先にあるであろう着る(使う)人たちへ向けられた愛情が必ずある。それは作り手の人生そのものであり、文化でもあるわけだ。320ページもの写真や言葉を通して、編み物に興味がある方はもちろんのこと、ものづくりに関する仕事をしていたり、新しいことをはじめたい方にも何かしらのヒントが見つかるはず。まさに編み物は一日にして成らず──。
*宮田明日鹿(みやた・あすか)
三重県在住。テキスタイルを学び、ファッション、手芸、アートの領域を横断しながら、手編みや改造した家庭用電子編み機などを用いて作品を制作している。2017年より、手芸文化を通して町の様々な人とコミュニティを形成するプロジェクト「港まち手芸部」を開始。その後、各地で同様のプロジェクトを展開している。近年の主な展覧会に「ひらいて、むすんで」(2024、岡崎市美術博物館)、国際芸術祭「あいち2022」(2022)、「名古屋×ペナン同時開催展:名古屋文化発信局」(2021、港まちポットラックビル)。手芸部プロジェクトに、「港まち手芸部」(2017-進行中、愛知県名古屋市)、「金石手芸部」(2021、石川県金沢市)(石川)、「有松手芸部」(2022、愛知県名古屋市)など。
*港まち手芸部
名古屋市港区にある港まちづくり協議会の提案公募型事業として採択(2017-2023)され、現在は委託事業として宮田明日鹿が運営する企画。様々な世代が集って参加者同士が「手芸、人生を学びあう場」であり「家の中のことを外に出してみる」実践として継続している活動です。