


著者:マグナス・ミルズ , 訳者:柴田元幸 / 出版社:アルテスパブリッシング / 四六変型判(171mm×132mm×12mm) / 200P / ソフトカバー / 2022年 4月発行
「俱楽部を作るんだよ。レコードをじっくり、
綿密に聴くことだけを目的にした俱楽部を。
いわば鑑識的に、いっさいの邪魔を排して聴くんだ」
月曜の夜、バーの小部屋に3枚のレコード盤を持ち寄り、厳格なルールのもとにただ黙って聴く──ストイックな倶楽部は順調に育っていくかに見えたが、やがてライバルが出現し、分裂の危機に揺さぶられる……。作中には60年代以降のロック、ポップスのタイトルが無数に登場するにもかかわらず、ミュージシャンやバンド名はいっさい明かされない、ロック愛好家にとっては試されているかのような小説だ。海外文学の翻訳に長けた柴田元幸によるあとがき、注解とマグナス・ミルズの著作ガイドも秀逸。イギリスならではの乾いたユーモアの名手が送る現代社会の寓話は、レコードで音楽を聴くと同様に、かくも愉しいものなのだ。